今、サッカーのワールドカップが大盛り上がりです。オリンピックもそうですが、4年にいっぺんのスポーツの祭典ですから、世界中大騒ぎ。日本では野球熱が高いのですが、ヨーロッパや南米ではなんと言ってもサッカーですから、注目度はとても高いわけです。日本が健闘しています。これからブラジル戦を迎える時に書いています。今は結果は分かりませんが、このメッセージがアップされる頃は結果が判明していると思いますので、お読みになった方は、文章が変だなとお思いだと思いますが、事情をご賢察下さい。思いつくままに、サッカーにまつわることを書きます。
私は、サッカーが昔からとても好きです。しかし、運動能力と練習嫌いの性格が災いして、運動部の経験はありませんで、見る専門です。それも怠けものですので、競技場に行かないでテレビ、新聞、ネット観戦です。ほかのスポーツも好きですが、皆同じ、見る派です。WBCを見るためにネットフリックスに出費する羽目になってしまいました。一番見て面白いと思うのはラグビーですが、サッカー、野球、バレーボール、フィギュアスケート、テニス、バドミントン、アイスホッケー、最近は卓球も見たら面白いですね。アメリカンフットボールとバスケットはそんなに選手などになじみがないからか、あまり見ません。その中で、サッカーは、昔々、たしか東京教育テレビと言うのがあって、三菱ダイヤモンドサッカーと言うのをやっていたのを毎週見ていまして、当時のイギリスやドイツの名選手の名前やチーム名を結構覚えました。まだまだ、スペイン、イタリアのリーグが有名でない時でした。高校ではクラス対抗のリーグ戦を2年生と3年生の時早朝やっていましたので、熱心に参加し、大学に行ってからは友人と初めて競技場に行きましたが、その時のスター選手であったポルトガルのエウゼビオ選手の雄姿は覚えています。ワールドカップは、役所に入った直後のドイツ大会からです。皇帝ベッケンバウアー、がに股の得点王ゲルトミューラー、守りのフォクツのドイツと、華麗なクライフ、ニースケンスのオランダとの決戦を役所に行く直前までテレビで見ていました。
その後も、名前はあげませんが、名選手がいっぱい。同好の士とこういうことをしゃべると面白くなります。ただ、ワールドカップを制するのは、司令塔が素晴らしいチームだという印象があります。ベッケンバウアー、マテウス、ドゥンガ、ジダン・・・。そういう意味で、長谷部がいなくなって、遠藤が立派にやっていると思った日本チームで、遠藤がけがのために不参加になったのはとても痛いと思います。とは言え、今回のワールドカップは、ちょっと違うようで、ゲームメーカーよりも、ストライカーが目立ちます。ものすごい選手がいますね。
二つ目の印象。ヨーロッパのチームの名選手の顔の色がずいぶん変わったことです。南米のチームは、アルゼンチンを除くと、ブラジルなどは、ペレ以来黒人選手に素晴らしい選手がいて、最近でも、ロマーリオ、ロベルトカルロス、ロナウド、ロナウジーニョ、リバウドなど黒人系のスパースターの中に、ドゥンガとかレオナルドとかの白人選手が混じっているという感じで、それは今も変わっていませんが、ヨーロッパのチームが大変革を遂げました。これまで、白人ばかりがいたような国のエースストライカーが黒人系の選手になっている例がものすごく目立ちます。従来から、フランスだけは別で、アンリがいたし、北アフリカ系だと思いますが、ジダンもそうでしょう。その後はどんどんそうなっていて、前回大会以来のものすごいエンバベに加えて、デンベレが大暴れである一方、昔は底の方から守りを固めていたデシャンのような目立つ白人選手がいません。オランダも、私がミラノに赴任していた時のACミランのオランダ人三人衆は、ファンバステンを除くとフーリット、ライカールトは明らかにアフリカ系の由来の選手であったと思いますが、その後も同じような名選手がたくさんいて、今回の大会につながっています。日本も大変苦労させられたのが記憶に新しいところです。前回大会になると、ベルギーがルカク選手を擁して日本を逆転で破りました。今回大会になると、イングランドも、ドイツも、スエーデンすら黒人系のものすごいストライカーが前線で大暴れをしていました。毎回ワールドカップを見ている私には強烈な印象です。そういえば、日本の守護神鈴木ゴールキーパーもお父さんがガーナ人だそうです。こうしてみれば、ヨーロッパなどで移民が多く受け入れられ、その中から、ワールドカップで大活躍をしているような名選手がどんどん社会進出をしている姿がよく分かります。移民の少ない日本ではそれほどではありませんが、ヨーロッパの各国では、このような移民を多く受け入れてきた社会に対する反発が白人「原住民」の中から強く起こり、それが各国における右派、国粋派の政治的台頭を呼んでいるのですが、スポーツの世界では、肌の色が違うからと言って、すぐれた選手を差別したり、迫害したりするという話は聞きません。移民をどの程度認めるかと言う議論はあろうとは思いますが、現にそこにいる人を差別したり、いじめたりしてはいけないと思います。サッカーの世界は、いじめるどころか、そういう人は国の英雄です。いいことだと思います。
3つ目は、韓国が一次リーグで敗退したことで、ホンミョンボ監督がバッシングされていることです。韓国は、ソンフンミンやイガインといった、ヨーロッパの一流クラブで活躍する名選手がいて、韓国でのサッカー熱も高いので、ナショナルチームの活躍に期待が高まっていました。特に後で述べる抽選運がよく、メキシコを除くと格下の2チームと一緒でした。しかもそこを勝ち抜いても、ものすごい強豪となかなか当たらないと言ったおいしい位置にいたのです。韓国ジャーナリズムはこれを「蜂蜜組」と呼んでいたそうです。滑り出しは予定通りで、チェコに勝って、メキシコにはミスがあって負けたのですが、ある意味予定通りで、後、南アフリカという大して評判の高くなかった国に勝てば、次はトーナメントでもカナダと言う開催国ではあるがそう強豪でもない国と当たり、ベスト16はおろか、ベスト8まで軽く行けそうだという感じだったのです。ところが、何と南アフリカに負けてしまったのです。今回は出場国が多いので、各組3位でも決勝トーナメントにいける可能性があったのですが、各組3位の中にもっと頑張った国があって、一次リーグで敗退してしまったのです。それで、敗北を責める大バッシングが監督に向いているようです。ホンミョンボ監督は、その前のクリンスマン監督の辞任を受けて任命された韓国人ですが、クリンスマンが選手としては、1990年イタリア大会の時の優勝チーム、ドイツのエースストライカーであって、容貌もかっこいいので大変な人気のある人でした。ただ、指導者としてはそれほど実績を上げていなかったので、この人選の失敗の責任は、当時のサッカー協会の幹部にあるのではないかと思いました。そこへ行くと、ホンミョンボは、これまた、2002年日韓大会の時の韓国の全体4位大躍進の立役者の一人ですが、当時からセンターバックとして、守備はもちろん、全体としての韓国チームの司令塔であったと思います。日本でも柏レイソルなどでプレーもしています。そういう人選ですから、これはいい人をついに任命したなと思っていました。事実ガタガタになっていた韓国チームをまとめて、その後はまずまずの結果を出していたと思います。それに籤運の良さ。
2020年日韓大会の時は、私は、経済産業省通商政策局審議官で、韓国も担当国の一つでした。カウンターパートの公使とはサッカーの話で盛り上がっていて、当時私はこんなことを彼に言っていました。「フォワードとバックは韓国が強いなあ、パクチソンもアンジョンファンもホンミョンボもいるしね。一方日本のハーフは世界水準だ、両国を合わせて闘えばいい線行けると思うけどね。」
負けたからと言って、よくやっていたホンミョンボ監督をバッシングするのはいけません。大統領まで、監督を個人攻撃するSNSを出したらしく、どうなっているんだと思います。日本だと、こうして結果が出たら、まあ一生懸命に頑張ったんだからという声が多くて、こうまで敗者をいじめることはなかろうと思いますが。むしろ、責任を問われるのは、クリンスマンを監督にして、指導もせず、ほったらかしにしていた韓国のサッカー協会であると私は思います。急遽駆り出されたホンミョンボをたたくのは筋違いです。それに、大事なことは、なぜ負けたか、何が欠けていたのか、今後どうしたらよいのか、そういうことをじっくり反省し、研究し、対策を打っていくことでしょう。それなのに、ああいう形で、敗軍の将だけれど立派なホンミョンボ監督をバッシングしていては、それが出来ないのではないでしょうか。そういう意味では、それほど強くなかった日本のサッカーの強化のために、日本のサッカー協会がずっとやってきたことは、その中身が分かるにつけ賞賛に値すると思います。
ただ一つ、ホンミョンボについて、気になることを述べます。オランダ、スペイン、イタリアを破って、破竹の勢いであった2002日韓大会の韓国チームが、さすがにドイツには跳ね返されて、臨んだトルコとの3位決定戦で、トルコの決勝点は鉄壁の守備の要ホンミョンボ選手の信じられないようなミスからでした。今回の南アフリカ戦の敗北をいささか彷彿させるような出来事でした。
第4に、日本サッカー協会のエンブレムは八咫烏です。3本足のカラスで、神武天皇の東征を導きました。和歌山県の南部にある3つの熊野神社、熊野三山の守護神です。でもなぜその八咫烏が日本サッカー協会のエンブレムなのか。それは日本にサッカーを初めて導入した人が和歌山に生まれた中村覚之助であったからであります。中村覚之助は、和歌山県の那智勝浦町の生まれで、東京高等師範学校の学生の頃、サッカーを日本に導入し、初めて日本人のサッカーチームを結成して、在日西欧人チームとの試合をしたのですが、それが日本におけるサッカーの嚆矢ということになっているのです。エンブレムを作る時に、先駆者中村覚之助にちなんで、その生まれ故郷の神様八咫烏をデザインしたのが、日本のサッカーを表すマークが八咫烏である理由です。
日本のサッカー協会の首脳は、ワールドカップやオリンピックで日本チームが活躍するよう、大会ごとに熊野三山に必勝祈願に来られます。私も、和歌山県知事である時、何度もその祈願に同行しました。2011年なでしこジャパンがワールドカップで優勝するなど、各チームが頑張ってきたのは、熊野の神様のおかげです。中でも偉いのは、澤穂希さんです。だいたいの時は皆さん必勝祈願には来られるのですが、戦いの後、お礼に見えられた著名人は澤さんでした。神様はそういう澤さんをずっと見ています。なでしこチームがワールドカップの優勝に続いて行われたオリンピックで銀メダルを取れたのも、澤さんの被った恩義はきちんとお礼して返すという善行のおかげだと私は信じています。私はある時中村覚之助さんのお墓に参ったことがあります。そのお墓は、和歌山県那智勝浦町のお寺の墓地にあります。決して派手なものではありませんでしたが、日本サッカー界の発展をそこから見守っていて下さっていると思いました。
最後に、今回の日本チームは、昨年から災難続きです。南野、三笘と言う名選手がけがでワールドカップに出られません。さらに、久保選手もオランダ戦でけがをしてしまいました。すべての駒がそろっていたら、今回の日本チームは絶対に史上最強だったと思いますが。おまけに、何たる籤運の悪さでしょう。一次リーグでも、日本に敗退の危機があるぐらい、強いチームが集まった組でした。おまけに、決勝トーナメントはこれほど厳しい組み合わせはあるのかと言うぐらいです。今夜深夜のベスト32はブラジル戦です。それに勝ったら怪物ハーランドのいるノルウェイでしょう。次はケインのイングランドです。さらにアルゼンチン。決勝まで進むのには次から次からとんでもない相手が出てきます。何ちゅうことかと私などは思うのですが、この頃ようやくわかりました。こんなこともあろうかと、目標は優勝だと言っていたのかと。目標が優勝だと、途中の組み合わせなど、どうでもいいことです。何せすべてを倒さなければならないのですから。
八咫烏が見守る中、日本チームは試練に立ち向かいます。