前回(平成26年1月27日付)「小野田寛郎さんを悼む」というメッセージを書かせてもらいましたが、朝日新聞の和歌山版「紀のひと」に、ご生前になされたインタビューをもとに小野田さんのご発言などが出てまいりますが、それを読ませていただいていると、一層この人は立派だなあと言う思いが募ってまいります。ご発言は、一つ一つ誠に理詰めで、しかもその「理」たるや、へ理屈ではなくて、人間の情けに深い所で結びついているようなものであると私は思います。
一つ紹介します。(平成26年2月18日付朝日新聞「紀のひと」要約)
小野田さんは帰国直後の記者会見で、行動をともにしていた二人の死を29年間で最もつらかったこととして挙げています。小野田さんの生還が世間で騒がれるほど、同じ苦労をした仲間が死んでいるのにと後ろめたさが増幅したそうです。そして、帰国後に閣僚から受け取った見舞金をそっくり靖国神社に奉納されました。それは自分だけ生きて帰って、ご慈悲でお金をもらう事に負い目を感じたからだそうです。30年遅れて帰っただけでお金をもらうのは先に帰った人と比べて不公平であり、線を引くなら戦死した人と生き残った人の間で引くべきだ。生き残った人は苦労話なんてするな、戦死した人はそんな事も言えないのだからと。命を持って帰れただけ恵まれているのだから、裸から出発しないと気持ちが収まらなかったのだそうです。
すばらしい人です。