毎年、毎日新聞からのお求めで、お正月号に載せるから、今年にふさわしい漢字を一字選んで書をしたためて下さいというものがあります。歴代知事などは、おそらく多くの方面から揮毫を求められたのでしょうか、誰々書という記念碑が一杯あります。私は書を習ったことがないので大いに苦手としていて、少しは断り切れなくて書きましたが、大いに負担です。もっと負担なのは、字の選定であります。あれもこれもたくさん課題に取り組まなければならない県知事としては、一つの字だけで思いを表せと言われると、大いに悩みます。悩んだ末に選んだのが「進」であります。
「進」はどんどん前へ進むという意味であり、前進、躍進、進歩、進撃、進化、進展などの熟語があります。昨年は「駆」という字を選んで、和歌山県も、インフラその他もう一度発展をするための条件、素地が整ってきたから、みんなで力を合わせて高みに駆け上がろうという意味を込めました。今年の「進」には、高みに駆け上がった後も、たゆまず前へ進み続ける努力をしよう、そうすれば県の繁栄と県民の幸せは必ず実現できるはずだとの思いが込められています。
平川祐弘さんの著作に「進歩がまだ希望であった頃」というのがあって、近代化による進歩が人々の等しく望む目標であった近代の社会が、その後の時代のそれへの懐疑主義の世相との対比で述べられています。私は明治維新151年目の本年、和歌山にとって、進歩は、そしてそのための努力は、未だに希望そのものであると信じます。