あっぱれ高校生-第45回全国高等学校総合文化祭-

 世はオリンピックと新型コロナウイルスの感染の大拡大に耳目が集まっていますが、和歌山では7月31日から8月6日まで第45回全国高等学校総合文化祭(紀の国わかやま総文2021)が県内各地を舞台に開かれていまして、随所で全国の高校生の躍動が見られました。高校生の全国大会としてはインターハイ(全国高等学校総合体育大会)が有名ですが、こちらの「総文」は文化部、サークルの最高の舞台で、一生懸命練習をし、腕を磨き、汗を流した生徒諸君が最高のパフォーマンスを示してくれました。

 全国から大勢の生徒さんが一堂に会するので、コロナ感染拡大の折から心配もしましたが、最大限の感染対策を施して、ほぼ例年通りのプログラムをすべて実行できました。昨年の高知大会では、ほとんどオンライン、ウェブによるものだったので、2年ぶりの「正規」の大会ができて、和歌山県は全国の総文の関係者から感謝をされました。
 ちょうど和歌山県でも感染がかなり出始めた頃だったので心配しましたが、これまでのところ来県関係者でコロナ患者が見つかったということもなく、全国の高校生諸君は高校3年間をかけた作品を展示し、演ずることができて、それぞれ青春の思い出を作って、それぞれの故郷に帰られたことと存じます。

 インターハイもそうですが、この総文は、すべてを地元の高校生からなる生徒実行委員会の諸君が企画し、組織化し、準備し、取り仕切るのです。国体やこれから和歌山で行われる国民文化祭、全国障害者芸術・文化祭「紀の国わかやま文化祭2021」の場合は、私が総合プロデューサーですから、開会式の構成とか、会場の設営などすべて取り仕切るのですが、総文の場合は「見せていただく」だけです。
 ところがこれが最高でした。
 総合開会式は、コロナのため全国の多くの生徒が入場するということはできませんでしたが、それでも各県代表の入場のもと、高橋ひなこ文部科学副大臣や開催県知事等の挨拶の後、秋篠宮皇嗣殿下が心のこもったメッセージを下さいました。そのお言葉に応えて、生徒代表で生徒実行委員会委員長、前冬磨君が堂々の歓迎の言葉を述べました。素晴らしい演説でした。素晴らしい内容の言葉を原稿を見ることなく、堂々と語りました。あんまり素晴らしいので感動しました。昨年のリハーサル大会の時は、まだぎこちなく、言葉を追うのに精いっぱいでありましたが、この一年で何という成長ぶりでしょう。若い力の無限の可能性を感じました。あんまり素晴らしいので、以下原文を引用します。

<生徒実行委員会委員長 挨拶>

 こんにちは。生徒実行委員会委員長の前冬磨です。
 本日は、第45回全国高等学校総合文化祭紀の国わかやま総文2021総合開会式にお越しいただきありがとうございます。
 私達、生徒実行委員会は約2年前に組織され、今日という日のために、今までずっと活動に励んできました。そんな私たちとって、こうして無事にわかやま総文を開催できたことは大きな喜びです。
改めて、大会に携わっていただいた全ての人に深く感謝申し上げます。
 さて、皆さんは総文に対してどのような印象をお持ちでしょうか?
 全国高等学校総合文化祭は、日本全国で日々芸術文化活動に励む高校生達にとって、最大の芸術文化の祭典であり、日頃の練習の成果を存分に発揮することのできる、最高の舞台です。多くの高校生達が憧れを抱き、目標とする、そんな特別な大会に、私はある願いを込めました。
「この総文が誰かの希望となりますように」
 この願いに託した真の意味を今日の総合開会式を通して、ぜひみなさんに感じていただきたいと思います。
 私はこの2年間の中で、人を笑顔にするということがどんなに素晴らしいことなのかを学びました。人は他者を思いやることでその人を笑顔にすることができます。そうして生まれた笑顔はまたさらに別の人の笑顔を生み、その人々を照らす光となります。私は、そんな光が集まる場所、それが総文だと思っています。誰かを思い、温かみが溢れ、優しさに包まれた場所。それが私の目指した総文であり、今日皆さんが出会う紀の国わかやま総文です。
 今、私達は新型コロナウイルスの影響によって、辛く苦しい日々を送らざるを得ない状況が続いています。しかし、どんなことがあっても、私達は1つです。
 ここにいる皆さんだけではなく、世界に向けてメッセージを発信したいと思います。

 To care for others… To hope for their happiness…
 Such a heart can make everyone smile.
 As long as we keep moving forward, we will surely find a way to reach our goals.
 By working with our friends from all around the world, we will make a future where everyone can smile.

 誰かを想い、誰かの幸せを願う。その心が多くの人々を笑顔にする。前に進むことをやめさえしなければ、きっと道は開ける。多くの方々が笑顔になれるように、私たちは仲間とともに協力します。ありがとうございました。

 そのあとは「交流」プログラムに次いで、「開催地発表」です。高校生諸君が考えたパフォーマンスですが、これが最高に良かったと思います。
 全体のテーマは「届けよう和の心 若葉が奏でるハーモニー」で、
第1章 「誕生」(命の光)
第2章 「成長」(若葉の光)
第3章 「歴史と風土」(創造の光)
第4章 「友情」(和の光)
 そしてフィナーレ「未来に響け」(希望の光)
という構成です。
 いずれも最高の出来栄えで大変感動いたしましたが、第4章の「友情」では、1890年トルコ軍艦エルトゥールル号の遭難者を串本の村民が全力で助けたことに端を発する、日本とトルコの友情がテーマになっていまして、マーチングバンドからトルコ軍楽隊のマーチが流れてきた時は、思わずジーンと涙が出てきました。そして最後は全出場者がステージに集って、ベートーヴェンの喜びの歌の大合唱です。これは和歌山国体のフィナーレで採用されたものの借用で、発案者の私としては、こんな素晴らしいパフォーマンスのラストによくぞ採用してくれたと、感謝の気持ちでいっぱいです。

 それにしても、全体に度重ねて流れる大会イメージソング「届けよう 和の心」は本当に素晴らしいものでした。この大会が決まった3年前に高校生だった森本七彩さんが作詞、田端志帆さんが作曲です。テレビから流れるオリンピックの歌も良かったけれど、私の中ではこっちの方が一段上だと思いました。そんな素晴らしい「届けよう 和の心」をせめて1番の詞だけでも以下に掲げます。

<大会イメージソング 「届けよう 和の心」>
 緑があふれる この和歌山で
 青春を共にする 仲間と出会った
 夢を共においかけ 奏でる 和のハーモニー
 自分を信じ 仲間を信じ 未来へ進もう
 時には苦しくもなる あきらめたくもなる
 でもだれにも負けないような
 強い想いがここにある
 さあみんなで奏でよう 
 友情と和のハーモニー
 山をこえて届けよう 私たちの和の心

 本当に素晴らしい開会式をありがとう。
 その後、生徒企画委員会総合開会式部会部会長 中川昴君がこれまた素晴らしい閉式の挨拶をしました。これも大感動したので、全文以下に掲げます。

<生徒企画委員会総合開会式部会部会長 挨拶>
 本日は、紀の国わかやま総文2021総合開会式にお越しくださり、ありがとうございます。
 私たち、生徒企画委員会委員は今日のために、2年間準備をしてきました。『 私たち高校生が持つ力を感じて欲しい。』『見てくださる方の心にいつまでも残る舞台を作り上げたい。』どうすればそのような舞台を作れるのか、生徒企画委員会の活動では何時間もかけてみんなで話し合いました。そして、開催地発表には、私たちが伝えたいと思った大きな2つの柱を盛り込むことにしました。
 一つは命の重さ、尊さ、ということです。今年は、東日本大震災や紀伊半島大水害から10年となります。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、世界中で、尊い命がたくさん奪われました。かけがえのない命の大切さを、あらためてみんなで考えたい、と思いました。
 もう一つは、”identity”つまり”自分らしさ”を大事にして欲しい、ということです。他人と違うことについて不安を感じるのでは無く、様々な個性を認め合える社会にしたい、という願いを込めました。
 さて、開会式をご覧いただき、私たちの思いや”高校生の力”を皆さんの心にお届けすることができたでしょうか?
  新型コロナウィルス感染症の影響で、部活動が制限され、やりきれない思いを抱えながら高校生活を送った仲間たちも多いと思います。だからこそ、この総文を、仲間たちが(みんなが)、自分の力を出し切れるような場にしたい、そして、参加する人も、見る人も、みんなが勇気と希望を持って未来に向かって進んで行こうという気持ちを持てる大会にしたい、と思ってきました。
 私たちの次に総合文化祭を行う、とうきょう総文2022生徒実行委員会の皆さん。 私たちが受け継いできた総文の精神と未来への希望のバトンを皆さんにつなぎます。
 最後になりましたが、運営に携わってくださった皆さん、総合開会式に出演してくださった皆さん、そして、この舞台を見てくださった皆さん、本日は、本当にありがとうございました。
この後開催する部門大会もお楽しみください。

 前君といい、中川君といい、そして数えきれないぐらい多くの高校生諸君が、会場案内や裏方で活躍してくれました。和歌山の高校生万歳。

 初日は、もう一つ、夕方、和歌山市の目抜き通りを全国から集まった俊英がマーチングバンドとバトントワラーの大行進をしました。さすが全国の高校生、そのレベルはとても高く、うならせるものがありました。
 全国の高校生万歳。

 その後、限られた時間ではありましたが、私は郷土芸能や器楽演奏、美術展などを見学に行きました。全国の高校生の才能のきらめきが一箇所に凝縮しているという素晴らしいものでした。もう一度全国の高校生万歳。

 最後で大変失礼ではございますが、秋篠宮皇嗣殿下、妃殿下におかれましては、総合開会式のみならず、オンラインでたくさんの演奏、出展をご覧下さいました。御案内をいたしました生徒諸君も大感激でありました。
 心からお礼を申し上げます。

 かくてコロナの中の一つの大きな大会が幕を下ろしました。