民泊の混乱に思う
最近、民泊に関する様々な問題が新聞テレビなどのマスコミをにぎわしています。特に大都会では、外国人を安く泊める民泊が流行っていて、そこに泊まりに来た外国人の振る舞いに対して、近隣住民が困っているという手の記事が多いようです。中身は詳細には存じませんが、さすがに大都会の自治体の一つがこれに手を焼いて、規制を厳しくするということになったので、その適用の前に緩い規制のままで、民泊の新規許可を取ってしまおうという動きが大変だというニュースもありました。それについて思ったことを書きます。
外国人観光客の急増とともに、特に大都会を中心にホテル旅館のキャパが追い付かず、民泊が脚光を浴びました。和歌山県のような地方では、空家も多く、それを民泊という形で活用できれば、これは経済的にもプラスであります。しかし、当時は民泊をコントロールする制度がなかったので、いい加減な民泊がはびこり、住民の不安が高まっていたことも事実でした。このような状況を背景に、2017年に「住宅宿泊事業法」が制定されました。しかし、この法律は当初から次のような問題を抱えていました。
①法律や政省令では、事業の適正な遂行のために事業者が何を行うべきかを具体的に定めていない。法令上ではなく、ガイドラインによる規定になっているが、これでは法的な安定性が欠け、事業者にとって明確性や透明性に関して問題が残る。しかも、具体的な規制は、そのガイドラインを尊重して条例によってなされるということになっているので、各地で法秩序がばらばらである。
②トラブルが発生した場合に「住宅宿泊管理事業者」が駆け付ける要件が緩く、周辺住民に対する事業者の管理責任が不明瞭である。もし客がトラブルを引き起こした時、旅館、ホテルと言う宿泊業者だと管理者が客に対応してくれる(しかし、宿泊業者はそのために多くのコストをかけている。)が、管理者が当該住宅にいない民泊の場合は、周辺住民が困り、市町村や警察に苦情が殺到するおそれがある。
このように、同法は、予見可能性と透明性が不足しており、また、自治体にその規制の中身を丸投げしているので、地方からは「住宅宿泊事業法は天下の悪法」との声が出ていました。特に旅館業法などの厳しい法規制を守り、客の管理も衛生状況の維持もコストをかけて行っている旅館、ホテルのような宿泊業者からは不公平だという批判がありました。もちろん、法律を作った政府の方も、このような批判はよく分かっており、その対応として、民泊の営業を行うことが出来る日数制限を課することにしていました。この手の対応は最近政府がよくやる手でありますが、こういう少しだけならいいでしょうという対応は問題解決には絶対にならないと私は思います。少しだけでも問題が起こってはいけないので、問題が起こらないように制度設計をするのが、為政者の務めだと思います。最近よくテレビで見かける、昔大人気のあったドリフターズのかとちゃんの、「ちょっとだけよ」みたいで、知恵が足りないなあと思っていました。
そこで、和歌山県では、問題の解決そのものに焦点を当てた制度を目指して、条例を作りました。「住宅宿泊事業法施行条例」(平成30年6月15日施行)がそれであります。
条例には、「苦情等への対応のため、民泊のオーナー又は管理業者はおおむね徒歩10分以内の範囲に駐在しなければならない」ことや、「事業の届出に当たって事業者は、事前に周辺住民へ説明したうえで、反対の意思がないことを確認しなければならない」ことなど、事業者が守るべきルールを明文化しまして、生活環境への悪影響の防止と事業者に対する透明性の確保を図ることとしました。大事なところで、既存の宿泊事業者の義務との間でイコールフッティングを確保したのです。その他、誰がこの民泊を管理しているかわからないと、苦情の持って行き場がなくなるので、管理業者への連絡先とか、この住宅がどのように民泊ビジネスに供されているのかが誰でもわかっるように必要な掲示を民泊用住宅の表に掲げさせることにしました。
こうすれば、トラブルが発生した時に、管理者がすぐ駆けつけてくれて民泊客と近隣の住民の間に立ってくれるのですから、365日民泊供用がなされても別に構わないと私は思いましたが、供用日数上限は政府のガイドラインにありますので、その上限を守ってもらうことにしました。こうやって、問題の芽を摘んでおけば、和歌山のように、街中に立派な空き家がたくさんあって困っている所も、近隣住民にも気兼ねなく資産利用ができるというものです。やりようによっては観光振興にも役立つし、外国からの旅行者も、日本の市民生活を味わえるとてもいい機会になるでしょう。何せ、地方都市の昔からの住宅は、人口過密に苦しむ東京などの大都会とは違って、ゆったりと経っていて、日本情緒たっぷり、外国人のノスタルジアに訴えること必定なのですから。
民泊問題で大変だと騒いでいる自治体は、従来のように何日に限ると言った知恵のない対応はいい加減やめて、何が起こりうる問題かをじっくり考えて、その可能性をつぶすような制度をきちんと作ることが求められるのではありませんか。一度和歌山県の制度でも見てみて、いいなと思ったら真似をされたらどうでしょう。