Give & give, take & takeの法則

Give & give, take & takeの法則

 イマジニア株式会社のファウンダーにして、10ミニッツTVの主催者である神蔵孝之さんという方がいらっしゃいます。その神蔵さんが日本ビジネス協会(JBC)の会長になられたので、会長就任のご挨拶文を送って来て下さいました。多くの先輩、仲間の珠玉の言葉が並んでいて、深くてなかなか読み応えのあるもので、感動して読ませて頂いたのですが、その中で、田口佳史さんという方の言葉で、「徳とは自己の最善を他者に尽くしきること」というものがありました。その通りだと思います。私はこの反対の概念は、ギブ・エンド・テイクだと思います。情けは人のためならずとも言われまして、それはそれで色々と深い意味があるようですが、私は、ギブ・エンド・テイクを常に考えて行動をすることは、少なくとも自分の行動原理としては取らないようにしています。人のために何かしてあげるときに対価を求めようとすると、行動が卑小になるような気がするし、おそらく人もあまり心から評価してくれないのではないかと思います。テイクが何かあるかなどと考えないで、とにかく人のためになることならさっさとやってあげたらいいのではないかと言うのが私の感覚です。私は聖人ではありませんので、おそらく心の中では、長い目で見たら、人のために尽くしていれば、そのうちその人も自分に何か尽くしてくれるのではないか、そこまで行かないでも好意は持ってくれるのではないかと思っているに違いないと思うのですが、その「長い目」がうんと長くて、とうとう人に尽くしてもらうチャンスが来なかったとしてもまあいいではないかと、私は思うようにしています。この神蔵さんの挨拶文の他の箇所に、分林保弘さんの言葉として、「自利とは利他を言う」と言う言葉があって、そのように他人の幸せを考えるような気持ちで行動していれば、脳からオキシトシンとセロトニンが分泌されて優しい幸せを感じることが出来ると解説されていました。こういうことからすれば、人に対価を求めることなく尽くし続けても、その分こうして自分が幸せを味わっているのだからいいやと言うことでしょうか。
 私は、その逆にテイクの方も、人には随分よくして頂くことがあって、いつかはお返しをしなければと思いつつ、それを実行する前にまた、重ねて親切にして頂くと言うことが沢山あります。お礼は申し上げているつもりですが、他の方のご厚意、ご貢献に同量に報いること無く、心の中の感謝だけで済ませているものが沢山あります。根が好い加減なものですから、このテイクのしっぱなしと言うのも、私はまあいいかと思うようにしています。
 そうすると、ギブ・エンド・テイクの代わりに、ギブ・エンド・ギブ、テイク・エンド・テイクと言うことになるかなと思う次第です。これを、私は、格好を付けて、ギブ・エンド・ギブ、テイク・エンド・テイクの法則と呼んでいます。
 神蔵さんが引用した田口佳史さんの言葉は、このギブ・エンド・ギブの精神を名文で表したものではないでしょうか。
 私は、職業生活として通産省・経産省の官僚、大使、知事とずっと公務員をやってきました。その職業倫理は人の幸せに貢献することです。一生懸命工夫をして勤めを果たしていると、自然にギブ・エンド・ギブになります。もちろん、その間テイクと言いうることもあって、公務員は首にはならないわけですし、収入がなくなることはないし、一生懸命つとめを果たしていると褒められたり、感謝されていい気分になることもあります。何らかの恩恵に浴することもあるでしょうし、名誉、名声に恵まれることもあるでしょう。しかし、そういう恩恵がことさら無くても人々の幸せのために尽くしているのだと思える仕事をやらせてもらっていると、オキシトシンとセロトニンがでて幸せな気分になれるわけですから十分報われているのです。私はあまり深く考えることもなくギブ・エンド・ギブ、テイク・エンド・テイクを実践してきただけでありますが、こういう仕儀につき、世の中に大いに感謝をしなければいけません。
 神蔵さんの挨拶文からも、もちろん神蔵さん自体の素晴らしい人格がよくわかるのですが、それとともに、神蔵さんのような方々が沢山集って、お互いにいい影響を及ぼし合っているJBCと言う組織も素晴らしいのではないかと思いました。文中にも、アメリカのMBAの意義について、人脈作りが圧倒的に大きいと述べている下りがありましたが、よき友と巡り会えると言う点では、JBCはMBAに匹敵すると言う指摘は、まさに至言であると思いました。