制度

 「官製談合汚職の防止はシステムで」、7年前の知事選挙時、私が県民の皆さんに申し上げていた事です。私が知事選挙に立候補して皆さんに選んで頂いたのは、官製談合汚職で前の知事が逮捕され辞職したからです。だから、もう二度と官製談合汚職を起こしたらいけないという事は有権者の方々の多くが望まれた事だと思います。それに応えるために私は上記の考えを示しました。これと対極にあるのは、「私は絶対に官製談合汚職を起こしません」とだけ連呼する事だと思います。「起こしません」ではなく「起こらないようなシステムを作ってしまう」事がよい行政だと思うのです。
 この公約を実現するために、私は就任後すぐ新しい公共調達制度作りに着手し、微調整を繰り返しながら現在の制度を作り上げました。その制度の中では、知事も職員も、個別の案件に首を突っ込んで、匙加減を利かせて誰に落札させるかを決める裁量権はありません。我々は、全体が最もバランスよく回っていくように制度を作る役割を持っているだけなのです。だから官製談合で汚職をしようにも出来ないのです。

 私は、行政の役割の大きな部分は制度を作る事だと思います。人々の行動はその制度によって左右されます。制度が、人々が汚職の誘惑に駆られやすいように出来ていると、それを良心だけで食い止めるというのはどうしても限界があると思うのです。人々が誘惑に駆られる事、あるいはやる気を起こさせる事をインセンティブと言います。漢字では誘引とか言うと思いますが、このインセンティブがよい方向へ、正しい方向へ、全体に利益をもたらす方向に出来ていて、人々をその方向に行動するようにしている制度が良い制度なのです。逆に、努力してもしなくても同じだと人々が思い、やる気をなくさせてしまうような制度は良くない制度です。こういう状況をモラルハザードを起こしていると言います。
 どうすればモラルハザードを防ぎ、全体がうまく行くように人々を良い行動に駆り立てるような制度を作れるかが行政マンの腕の見せ所です。どうすればそういう制度を設計できるか、それには行政知識と行政経験がものを言うと思います。良い政治には行政の経験と知識があった方が得だと私がいつも言っているのは、そのような理由からであります。