和歌山の青年よ、奮起せよ

 最近、和歌山でも仕事に前向きに取り組んで業績を伸ばしたり、全国的な賞をもらったりする例が増えてきました。しかし、和歌山の長期的退勢を食い止め、反転攻勢に出るには民間企業や人のイノベーションがまだまだ数、程度ともに足りません。いつも言っているように戦後和歌山では多くの青年が死に物狂いで事業に取り組みました。それが戦後の和歌山経済の成長を支えてくれましたが、時代が進んでも、島精機やノーリツ鋼機や紀州技研といった今の和歌山を支えてくれているエクセレントカンパニーがどんどん成長して、繊維や木材、雑貨といった産業全体としての退潮の変わりをある程度埋めてくれたと思います。
 しかし、日本の他地域に比べ和歌山は長期的にかなり沈んでおり、これを取り返して反転に出るためにはもっともっと多くのイノベーションが必要です。そのためにはビジネスに従事している青年、またはこれから仕事をしようとする青年にもっと頑張って欲しいと思っているのです。
 中堅中小企業にとって立派な後継者がいることは、現在の重鎮の方々にとっては一安心です。それら後継者の方々も見たところいわゆるドラ息子はいず、ちゃんと社業もされているし、JCやロータリー、各種NPOなどに参加して社会的に有意義な事をされている紳士ばかりだと思います。しかし、それでも私はそういう若い世代にもっと死に物狂いで社業を伸ばしてもらいたいと思っています。社業を伸ばすという事は、それだけ人を雇うということだし、他社への発注も増やすという事ですから、JCの社会貢献活動も大変重要でありますが、それよりもはるかに和歌山のために貢献していることになるのです。
 だから私はいつもそういう団体の挨拶などでは県職員の作ってくれた「カクカクの社会貢献には極めて有意義だ」などという挨拶原稿を読まず、「社業に励め」などと、失礼かもしれませんがはっぱをかけています。わかやま塾を熱心に推進しているのもその表れです。
 しかし、まだまだです。輸出を伸ばすため海外に突撃だ、などと激励していますが、現に日本酒の輸出や食肉や果物の輸出を大もうけしているのは他県の若者です。観光業界のあり方を一新するような新しい経営で世にインパクトを与えているのも他県の若者です。チェーン展開で全国ネットを作りつつある企業も他県から出ています。負けるな和歌山の若者。
 イタリアルネサンスの巨人の一人、ロレンツォ・ディ・メディチはフィレンツェ共和国を隆盛に導いた名指導者であり、ヨーロッパをまたにかけた当時のユングロマリットの総帥であるとともに多くの芸術家のパトロンとして彼らを育てた人物でありますが、本人も芸術家として一流の才を示した人であります。
 そんな彼が「バッカスの歌」の中で次のような文書を残していますので、これから死に物狂いで頑張って下さるであろう和歌山の若人に又引きですが次に引用します。
 「青春とはなんと美しいものか。とはいえ見る間に過ぎ去ってしまう。楽しみたい者はさあすぐに。確かな明日はないのだから。」(塩野七生「ルネッサンスとは何であったのか」より)
 どうもこういう事を言いたがるのは、私がそろそろ年を食ってきたせいですかね。