「海難1890」のエキストラの涙

 1890年のエルトゥールル号事件と1985年のテヘラン事件を描いた田中光敏監督の大作「海難1890」は、すべての撮影を終了し、目下監督がねじりはちまきで編集作業に入っています。12月5日の封切りが楽しみです。8月17日に、その田中監督と和歌山県のプレミアム広報誌『和-nagomi』の対談記事収録でお話をいたしました。田中監督の素晴らしい言葉がたくさん散りばめられた『和-nagomi』は11月頃の発行ですので、是非目を通して下さい。ただし、部数が少ないため、特に県内のすべてのご希望の方にお送りするわけにはいきませんが、県庁HPで電子媒体で読むことが出来ますので、どうぞよろしくお願いします。

 その中で、とりわけ私の耳に残ったのは、串本におけるロケの際にも、トルコにおけるロケの際にも、大勢のエキストラの方々がボランティアで出演して下さったのだが、その方々が撮影終了の際、皆涙を浮かべて、終了を祝って下さったことだという事です。
 串本のロケの際には、熱心にこの映画の実現に尽力して下さったNPO「エルトゥールルは世界を救う」の方々など多くの方々が村人などに扮して出演して下さったのだが、終了時に皆で笑顔を撮ろうとしたら、皆感動して涙を流して下さっていて、その表情がまた素晴らしい絵になりましたとのことでした。
 また、トルコでの撮影の時にも1000人からの大エキストラが出演して、テヘラン脱出を待つ空港の情景を撮ったのだが、これに出てくれたトルコの方々が、こんな立派な話の映画に出演させてもらっただけで幸せだ、自分たちは貧乏なのでこんなものしかないが、と言いつつ、トイレットペーパーで作ったトルコの国花チューリップをたくさん作って涙を流しながら飾ってくださったのは、本当に感激的でしたと言われました。
 和歌山とトルコの人々にあるこの熱い友情に、この「海難1890」は、紅い火を付けてくれました。寄付集めなどで走り回った私も本望です。
 きっと私も劇場で涙を流すことでしょう。あのエルトゥールル号の乗組員を救った串本・大島の人々の、その和歌山に生まれたことを誇りに思いながら。