涙 流れてやまず

 第70回国民体育大会「紀の国わかやま国体」は、10月6日感動のうちに幕を閉じました。

 和歌山県民の念願であった男女総合優勝、天皇杯獲得は、選手諸君の大変な頑張りで獲得することが出来ました。かつての剣道の世界チャンピオン、65才の剣道成年男子チーム大将の横尾英治先生(元桐蔭高校教諭)が、日本体育協会の張会長から賞状をもらわれるのを、また、和歌山県が9年前から始めた子どもたちの発掘プロジェクト、ゴールデンキッズの卒業生で、高校レスリングの三連覇を果たした吉田隆紀選手が、秋篠宮殿下から天皇杯カップを授与されるのを見て、じーんとして涙が出ました。
 受けるか否かで色々と議論のあった国体を、9年前知事就任とともに受けると決め、40番台で低迷していた県チームを男女総合で優勝させ、天皇杯を取るんだと公言し続けて9年、本当に天皇杯が和歌山のものになりました。他県のようにチームを丸ごと引き受けてくれる企業が大変少なく、人口もそう多くない和歌山県にとって、選手の競技力の強化はそう容易ではありませんでした。しかし、その中で、一人また一人と、有力な選手が和歌山に来てやろうと人生意気に感じて集まってくれ、地元でもエクセレントコーチなどの指導で若い人々がどんどん伸びてきました。企業や各公共機関も本当によく協力して、選手を育て、迎えてくれました。そして、県の競技力向上推進課やスポーツ課そして体育協会のスタッフが寝食を忘れて選手の競技力向上に涙をともにしてくれました。競技力向上推進課長として、4年間も県のために尽くしてくれた文部科学省のスポーツの俊才、星香里さんのリーダーシップと献身は、和歌山県民にとって永久に忘れてはなりません。また、その前任として星さんの仕事の先鞭を付けてくれた森岡裕策さんと日比野幹生さんにも感謝を申し上げたいと思います。閉会式の後、選手団の解団式で、突如、選手諸君から若宮国体推進監、星総監督とともに胴上げをしてもらい、一生に一度の感激を味わいました。涙流れてやまずです。

 競技力向上のほかにも紀の国わかやま国体の開催にあたっては大変な仕事がいっぱいありました。「国体までに」、を合言葉に、県内の高速道路網、幹線道路網、主要都市の中心的道路を次々と整備していきました。主要競技場も修理していかないといけませんが、前回の国体開催時には周囲にいっぱいあった駐車スペースが、その後すっかりと住宅に化けて無くなっている紀三井寺競技場への運輸手段をどう工面するか、各県選手などの宿泊施設をどう確保するかなど難問ばかりが立ちふさがっていた状況を、一つ一つ工夫して解決していきました。その間、数限りない県民、企業、団体の協力無くしては、これは到底なし得なかったことと思います。また、国体の開催には多くの県民の一つ一つの協力が本当に役立ちました。町を綺麗にしてくれ、花を飾ってくれ、ボランティアとして運営に協力してくれ、そして、開会式や閉会式の演技に、本当に大勢の方々が出演して協力してくれました。県民総参加は言葉だけでは決してありません。本当にありがとうございました。9月26日の開会式の式典前演技では天皇皇后両陛下の前で、紀の国の道、すなわち森の道、海の道、心の道、そして道は未来を出演者の皆さんが見事に演じて、会場のグラウンドで素晴らしい演技を見せてくれました。道は未来へで、坂本冬美さんの歌う国体ソング「明日へと」のフィナーレに会場の子どもたちが一斉に傘を開き、傘に描かれたとりどりの笑顔が一斉にグラウンドに拡がった時は涙を抑えることができませんでした。さらにそれに引き続き、出演者の皆さんのほかに、県民総参加の象徴として会場にいる観客の皆さんも入ってベートーベンの第9交響曲よろこびの歌の大合唱、大演奏が鳴り響いた時、もう涙流れてやまずでした。あの時、紀三井寺競技場に鳴り響いたよろこびの歌をもう一度掲げます。

  あなたが笑顔でいられるように
  みんなが笑顔でいられるように
  あなたが笑顔でいられるように
  みんなが笑顔でいられるように
  明日につながる希望をのせて
  笑顔の力で世界を照らそう

 第70回国民体育大会「紀の国わかやま国体」はこうして和歌山県民の魂をゆるがし、勇気を与えてくれながら通り過ぎていきました。炬火の火が静かに消えていく時、またまた涙ながれてやまずでした。ご協力いただきましたすべての皆さんに本当に感謝しています。ありがとうございました。
 そして、すぐ10月24日からは、今度は全国障害者スポーツ大会「紀の国わかやま大会」です。