11月7日 和歌山県の高校生向けプロジェクト「きらめき夢トーク」で東京大学副学長石井洋二郎さんにしゃべってもらいました。タイトルは「深く迷い、高く跳べ!」です。前にも書きましたように、きっかけは今年の春の東京大学教養学部の学位記伝達式において卒業する学生に対して当時学部長であった石井さんが語った訓示「痩せたソクラテス」です。これが出色であるとしてネット上で話題になっているというのを、私は教えてもらい、読んで大感激をしましたので、きらめき夢トークで子供たちにお話をしてもらおうとの企みを持ちつつ、早速私はお会いしに行ったのです。(そこでお土産にいただいた石井さんの「告白的読書論 中公文庫」にまた圧倒されましたが。)という訳で実現した今回のきらめき夢トークですが、出席の高校生諸君は熱心に聞いてくれて、何かしら彼らの今後の人生にプラスになったのではないかと信じています。
私も一緒に聞かせていただきましたが、読書感想文を無理強いする事が、子供たちに嘘をついて誉める癖をつけ、ひいては本嫌いにさせるとか、「戦争法案」というレッテルを付けるだけで、自分の頭で考える事なしに流されている今日の事態は問題だとか共感できる所がたくさんありました。
しかしながら、高校生諸君にとって、等しく役に立ったと思われる事はタイトルにもあるようにこれから自分はどう生きていくかについてのお話しであったように思われます。
石井さんは自らが大学に入ってから、現在の専門分野に没入するまで、散々迷って苦しんだ話を語りつつ、万人にとって真に有益な話をしてくれたと思います。
人は皆子供の頃は無限の可能性を持っています。しかし、年とともに選択を迫られ、選ぶことによって進む道は決まり、逆にその道は狭まっていきます。石井さんは、そこで「選ぶ事は捨てる事だ」という珠玉の言葉を吐きました。しかし、一般に可能性を捨てる事はとても辛い事だから人々は迷い悩みます。自分は何がしたいのか、何に向いているのか、何ができるのか。中々答が見つからないものだと石井さんは言います。しかし、ある時考え方を変えたのだそうです。自分は何をしている時が幸せか。何が自分らしいか。何をしていると自分を偽らないでいられるか。そう思ったら答が見つかったそうです。
「何かを決めるには、まず本気で迷わなければならない。」そして、「深く迷えば迷うほどより高く跳ぶ事が可能になる。」のだそうです。
今の若い人は、皆学校で手取り足取り立派な教育を受けるし、その方向はできるだけいい大学に入ることや、できるだけいい企業に就職することである場合がほとんどだと思います。でも石井さんは言います「18歳の春で一生が決まる訳ではない。」「深く迷い、高く跳べ!」
中々いいお話しでした。それでも直接聞くことのできたのは200人程度でしょう。したがって、私は創立100周年行事などで高校生諸君を前に話をする機会がある時には、石井さんの受け売りで以上のような事をお話しすることにしています。
でも18歳の春を我々一人一人の人生に換えたら、例えば「超優良企業に入っても」とか「県庁に入ってても」とかで、一生が決まる訳ではありません。知事になってもそれで評価が決まる訳ではありません。それが人生の目的であってはなりません。悩みながら、迷いながら進むしかないという事でしょうか。県民の皆さんが幸せになるよう、高く跳ぶために。
(参照)「痩せたソクラテス」https://nisaka.sunnyday.jp/desire/1540/