「ちょき」という映画が封切られています。和歌山の町中で美容室を営んでいる40歳の主人公が、若くして亡くなった、書道教室をしていた妻をずっと想い続けながら、静かに町の人々の髪を切り続けているところへ、昔夫婦で可愛がっていた盲学校の少女が訪ねてくるという話です。
少女はDVの父親による暴力で視力を奪われてしまい、母親は、これまた娘に辛く当たり、挙げ句の果てに犯罪に手を染めて刑務所に入っているという設定です。そのように辛い人生を経てきた少女役の女優さんが、全身からその悲しさ、わびしさと、その後の心の動きを表していて、本当に素晴らしいものがありました。また主人公も、何年もの間ずっと、亡き妻の位牌に好物のコーヒーをお供えし続けながら、近所の人たちと優しく接している様子や、少女との巡り会いによって、心が揺れ動く様が美しくも、悲しく描かれていました。
全体がとても切ない話なのですが、周りの人々の温かさや、舞台となる和歌山市の美しい景色が、この話の背景として静かに漂っているという映画でした。
こんな素晴らしい映画を際立たせる背景として和歌山の人の日常や町の景色が採用されたことに大変な誇りを感じるとともに、和歌山を選んでくれた監督をはじめ映画会社、色々とサポートをされた和歌山市の有力な知識人や市当局の方々に心から敬意を表したいと思います。
私は、一人の有力なサポーターの方から試写用ビデオを見せていただいたのですが、いよいよ映画館で上映の運びとなりましたので、皆さん是非観ていただきたいと思います。そして、この映画の背景となったわが和歌山市を思ってもらいたいと思います。エルトゥールル号の話を描いた「海難1890」とは別の涙にくれることになります。ずっと長い間、涙がじんわりとしみじみとにじんでくるといったような。