子を思う親の心を積み重ねて

 標記の題名の本が出版されました。この本は、2014年8月に多くの人に慕われながらこの世を去っていかれた岩橋正純さんと岩橋さんがリーダーとなって悪戦苦闘しながら前進してきた社会福祉法人つわぶき会、和歌山市障害児者父母の会の物語です。作者は高田朋男さん、県庁OBですが、最近勝本僖一アクロナイネン(株)会長への伝記で名を挙げた作家です。
 私もさっそく読ませていただきましたが、高田さんの教養あふれる書き下ろしの部分もいいのですが、多くの人々が岩橋正純さんを偲んで文章を寄せておられるのがとても感動的で、特に御子息で正純さんの後継者としてグループを率いておられる岩橋秀樹さんのお書きになった第2章「父の心を背に この子らの為にし」に胸を打たれました。さまざまな父子の葛藤も素直にお書きになった、息子による父の一生を読ませてもらい、何度も涙しました。強くて、やさしくて、一途な人だったんだなあと改めて思いました。
 私が岩橋正純さんにお会いした時は、知事にならせていただいた後ですから、その時は、既に岩橋さんは声帯を失っておられましたが、よく会いに来て下さり、人工声器を使ってお話になる、その福祉事業にかける情熱と仲間の方々との愛情は胸を打つものがありました。また、毎年綜成苑、綜愛苑の夏のお祭りに呼んでいただくのですが、福祉施設の方々と地域の住民が一緒に夏祭りを楽しんでいる姿は、他のどこにもない素晴らしい催しだと思います。挨拶に回ってお会いする障害児者の方々の楽しみようも、ずっと遡れば、岩橋さんや父母の会の方々の思いと努力のおかげだと今さらながら思います。私も一文を掲載していただいたので、書いていますが、あの感動的であった、紀の国わかやま大会のフィナーレで選手も観客席の多分父母の方々も一緒に踊った姿をほんの少し前に逝ってしまわれた岩橋正純さんに見ていただきたかったと思います。岩橋正純さんの残された立派な遺産は、岩橋秀樹さんをはじめ、正純さんの友人や後輩によって立派に引き継がれていますが、私も、岩橋正純さんやそのお仲間を応援された先輩方に負けぬよう、心のこもった障害者福祉政策にしっかりつとめなければならないと思いました。