ヤドリギ

 ヤドリギという植物があります。エノキやケヤキといった大木の枝先にくっついて、その幹に根を張って栄養分を吸って生きている寄生植物でビャクダン科の遠くから見ると鞠のように見える常緑樹です。冬になるとエノキなどは落葉するので、このヤドリギが枝先にくっついているのが目立ちます、分布は広いのですが、和歌山城には特に多く、お堀の外から眺めると、お堀に面したエノキなどの大木がヤドリギだらけになっているのをよく目にします。
 ヤドリギは寄主であるエノキなどから栄養分をもらっているのですが、一つや二つくっついていてもエノキの大木はびくともしません。しかし、さすがに余りにもいっぱいヤドリギにとりつかれると、栄養を取られすぎるのか枯れてしまうようです。最近和歌山城のエノキの大木などが次々と枯れています。

 私は知事に就任してすぐ、お城の外の道路から眺めて、余りにもヤドリギが多いので、少しいやな気持ちになりました。というのは、私が知事になるようにとのご要請をいただいたのは、前知事をめぐる汚職事件とこれに伴う前知事の辞職によってでありましたが、その汚職も例えてみると和歌山県という木に前知事の知り合いの人が寄生したようなものだと思うからであります。贈収賄はもちろんそれ自体正義に反することですが、権力者、権限を有する者に賄賂を送ることによって、他に回っていたかもしれない仕事を自分の所に無理矢理持ってこようとすることですから、社会にはえらく不効率を持ち込むことになります。また正直に腕を磨いている人に理不尽に不利益を被らせるわけですから、正直者が真面目に働くのが馬鹿らしくなって、結果的に地域の力がそがれてしまいます。たかりの類いも同じです。理不尽な事業補償とか漁業補償とかをせしめたら、真面目に働くことがあほらしくなって、機会があればたかりで儲けようなどと考えがちになりますから、これらも地域の力を大いに失くしてしまいます。和歌山が発展していくためには、全ての人が一生懸命正業で全力を上げていくことがどうしても必要でありまして、その大敵はヤドリギのような寄生で生きていこうとすることであります。

 実はこのヤドリギ、中々しぶといのでありまして、実は鳥に食べられますが、消化されずに排出されます。その時ねばーっとする液で実が覆われていて、これを排出している鳥の姿は見るからに気持ちが悪いのですが、このねばねば液の働きで木の枝にくっついて、そこから根を枝の幹に伸ばしていくのです。人間世界の悪の権化、寄生も人間のある種の心理にがっちり根を下ろしているものですから、中々退治が難しいと思いますが、そこは、頑張って寄生に陥らぬよう身を引き締めていかねばなりません。
 このヤドリギも悪影響を及ぼしそうだったら、ヤドリギがくっついている枝の元から切ってしまったら良いそうで、その旨お城を管理している尾花市長にアドバイスをしています。人間世界の寄生のような悪事も根っこから切ってしまうということでしょうか。