和歌山県は歴史的に県内に大学が少ない割には教育熱心であるために、多くの学生が県外の大学に進学せざるを得ない状況が続いていました。この結果、毎年県外大学進学率が断然トップの県であるわけです。
この背景には、少しでもいい大学に子弟を行かせてやろうという家庭が多く、そのため結構無理をしても学資を出してあげる家庭が多かったからかなあと思うところもあります。無理に県内に大学を作って、行かせなくてもというわけです。
しかし、この状態が続くと、色々と和歌山県がつらいことが顕在化してきます。遠くへ子弟をやる学資負担も段々とつらくなってくるし、子どもたちは、大学のある地域で就職してしまう傾向があるので、人口流出を助長してしまいます。また、県内に大学生が多く滞留しないので、町の活気も失われます。最後の点は、こともあろうに和歌山大学が和歌山市の中心地から和泉山脈の丘の上に移ってしまったことでさらに進んでしまいました。
私が知事に就任した頃には、県内の方々も、これではいかんと思い出した頃で、大学を誘致せよという提案がどんどん寄せられました。
しかし、その30年前、日本にも大学新設ブームがありましたし、外国の有名大学のブランチを作るという話がいっぱいありましたが、その頃残念ながら和歌山県は沈黙していましたので、チャンスを逸してしまったというところが大きいのです。今や少子化で大学生の数も減り、大学は構造不況産業となり、人気のない大学が倒産するという時代になっているのです。
しかし、よくよく世の中を観察しておりますと、大学を出たら資格が取れて、その資格を要する職業が世の中で人気があって、就職も心配ないというような大学である場合は、まず経営も大丈夫で、その分野の職業人が不足しているような場合は、大学新増設の余地があるということがわかってまいりました。
そこで、和歌山県では様々な検討と努力を行った結果、県立医科大学の薬学部の新設(薬剤師養成)、東京医療保健大学和歌山看護学部の新設(看護師養成)、和歌山信愛大学の新設(保育士養成)と次々と大学の具体化に成功してきました。
そして4つ目として、このたびこれからうんと需要が高まってくると思われるリハビリ・ニーズに向き合う理学療法士、作業療法士を養成する大学を誘致することに成功しました。10月5日県庁において、この学問分野に実績のある宝塚医療大学と「宝塚医療大学和歌山保健医療学部(仮称)」の新設について合意し、協定書を取り交わしました。
場所は和歌山駅にとても近い旧県体力開発センター跡地とし、2020年4月のスピード開学を目指して、理学療法士コース60名と作業療法士コース40名、計1学年100名の4年制大学が誕生します。この分野には、県内の高校生の志願者も多く、特に大学は県内にないものですから、約100名の志願者が県外の大学に行かざるを得ないことになっていたのです。この若者を県内に留め置けば、県内の多くの職場への人材供給にも資するし、若者が和歌山駅周辺にいっぱい集まって町の活気も取り戻せると思います。
この大学の誘致を巡り、大活躍をしてくれたのは、野㞍孝子福祉保健部技監・健康局長でしたが、一時は和歌山市の市民図書館跡を利用してという案で話がまとまっていたのですが、色々と市の方で異論が出て暗礁に乗り上げました。しかし、県で別の用地を提案したりして、ついに、こうして実現の運びとなったのです。
この分野では、和歌山国際厚生学院という専門学校が既にあり、この経営の足を引っ張ったら気の毒というところもあるのですが、実は高校生諸君の志望者数や職業人のニーズなどから県は周到に計算をしてありまして、足を引っ張るはずがないことになっているのです。
そのようなことも踏まえて、私は進出協定の調印式で次のように挨拶を致しました。
(挨拶)
本日は学校法人平成医療学園の岸野理事長をはじめ皆さんにおいでいただきありがとうございます。
このたび、宝塚医療大学がリハビリ学科を、正式名称はリハビリ学科だったでしょうか、リハビリ学科を和歌山市内の和歌山駅前にあります、和歌山県で言えば、旧の体力開発センターの跡地なんですが、そこに作っていただくことになりまして、心からお礼申し上げます。
和歌山県はもとよりですね、全国どこもそうなんですけれど、特に高齢化が進んでいる県です。そういう意味では高齢者の方々をどうして幸せに過ごしていただくのかがたいへん大事なテーマになっております。そういう意味で、どうしても高齢になると体がちょっということをきかないとか、あるいは故障して、それを医学的にはもちろんなんですけど、リハビリの力を借りて治さなければいけないとか、そういったことがたくさん出てきております。
そういう意味でこれからどんどん必要になってくる人材をですね、残念ながら実は歴史的に言うと、和歌山県はその人材養成を全部県外に頼ってきていました。もともと大学が少ない県なんでございますけれども、全部頼っていたというのが実情です。そこで、歴史的にはですね、専門学校を作っててみようと。これは、当時、和歌山市内で大きな病院を経営していた寺下俊雄さんという方がちょっと男気を出されてですね、和歌山国際厚生学院という、専門学校ですが、作ってくださって、それで定員40人でずっと続けて下さっております。
しかし、我々の調査ではだいたい180人、リハビリ分野で和歌山県で志願者が。当然世の中の状況を見ながらですね、そういう面で自分は生きていこうと思っておられる人が毎年それくらい出てくるんです。で、その中でも100人くらいは大学生になってリハビリの分野で尽くそうと、こういう風に考えておられるのがあって、この100人については、まったくそっくり県外に行ってもらわざるを得ないというのが和歌山県の現状でありました。
そこに、宝塚医療大学がリハビリ学科を和歌山市に作ってあげようということになりまして、これはあの、全てかどうかは知りませんけれども、かなりの部分ですね、その人達は和歌山県外に出なくても、大学生として立派なリハビリの学士になってもらえるなあという風に期待をしているわけであります。
そういう意味で、我々としては心から皆様を歓迎したいのですが、いろいろと話をしていく中でちょっとした行き違いみたいなことがあって、場所が少し変わりましたが、私から見てですね、新しくできる場所はものすごく良い場所になったなあと、結果オーライと思っておりまして。皆様方の今後の建設、運営に心から期待を申し上げるとともに、我々もしっかりと支えていかないといかんと。それが和歌山県の医療を支えてくれることになる、そんな風に思っています。本当に本日はありがとうございました。