和歌山県は、みかん、うめ、かき、ももなどたくさんの種類の果物がとれ、果樹王国だと自負をしています。しかし、このところ、他県も果樹生産を伸ばし、和歌山県が伸び悩み、又は後退したこともあって、色々な指標で他県の後塵を拝することがありました。
しかし、ごく近年その和歌山県の果樹生産がまた大いに盛り返しつつあります。みかんの生産量では日本一であるものの、産出額では静岡県や愛媛県に首位の座を奪われていたものを、厳選出荷方式を平成27年に開始したとたん首位の座を奪還しました。厳選出荷方式とは、JAグループ等と県が協力して、出荷にあたっては、厳重な糖度コントロールを行い、決められた糖度以上のものを「厳選」として箱詰めをし、市場で評価してもらおうというもので、それに不合格になったものは、極力加工に回すことにし、そうすると、その部分の農家収入がうんと減るので、県とJAグループ等で助成を出そうというものです。平成28年度もその流れが続いていて、我が県庁の農業担当者は、産出量、産出額に続いて販売単価でも日本一になるんだと三冠王に燃えていました。もちろん、これに触発されたのでしょうか、他の果樹でも、生産、販売ともに、県はもちろん、JAも農業法人も個々の農家も積極的な姿勢が見られるようになりました。そして平成29年、ついに和歌山県は、このところ全国2位か3位であった果樹全体の産出額で、全国一位を奪還しました。平成29年の和歌山県の果実産出額は816億円で、青森県の790億円、山形県の705億円を抑えて15年ぶりに日本一となりました。平成28年産と比べてみかんで27億円、うめで84億円増加するなど、全体で114億円増加した結果であります。
そのうちみかんも、産出額は3年連続で首位を堅持、しかも前年比27億円増の335億円と2位の静岡県の246億円、3位の愛媛県の235億円に対し、かなりの大差をつけるようになりました。三冠王を目指している単価も厳選方式前の平成26年に比べ毎年123パーセント、134パーセント、159パーセントと単価を上げて平成29年はキログラム当たり304円の全国4位となりました。順位も平成26年の8位から、8位、7位、4位と段々と上がってきています。(もっとも、首位の静岡県が大幅な単価アップとなり、和歌山県の単価も上がったものの差が広がりました。)
このように、果樹王国和歌山は、一時の低迷期を脱して、躍進を始めています。この10年余り、販売チャネルの多様化や輸出、6次産業化、生産方法の工夫による超高級品の創出、優良品種への更新、生産技術の工夫、機械化など、官民を上げてありとあらゆる努力をしてきた結果が結実して、大変うれしい気がします。
しかし、まだまだ手放しでは喜べません。昨年は、大きな台風も3つもくらって、随分と被害も出ました。回復するまでに数年を要すといったところもあります。生の自然が相手ですから、病気その他何が起こるかわかりません。他県もがんばるでしょうから、さらに改良を加えるといった不断の努力を必要とされるでしょう。
それにこうやってがんばっているうちにも、我々自体が1才1才と年をとっていきます。果樹作り名人も後継者がいないといつまでも続けられません。全国どこでも大変なこの現象ですが、この高齢化、後継者不足という問題に立ち向かわなければなりません。しかし、和歌山県の各産地でずっと見られてきたように、大いに売上額が伸びて儲かっている農家や産地が儲かっている時代には、若い人々も就労してくれるものです。したがって第1の必要条件は所得を上げること、すなわち産出額を上げることです。その上で様々な工夫をしてこの大問題に立ち向かうのです。その意味では、果樹王国No.1を奪還した今、和歌山県の次の挑戦が始まります。