お盆台風といわれた台風10号は、ゆっくりと北上し、日本各地にとりわけ大雨をもたらしていきました。台風の中心は四国の西端を通ったので、和歌山県は直撃というわけではありませんでしたが、台風の外縁部の雨がなかなか降り止まず、台風が日本海に去った後もまだ大雨が紀伊半島では降り続いて、各地で被害が出ました。
当初の予想では15日日中が一番影響が大きくて、15日夜から16日になると、まず影響は小さくなるだろうと思われていましたので、15日日中多くの市町村で避難準備の発令がなされました。県庁も警戒体制に入ったわけですが、私は、時々心配な箇所のある振興局長や担当部長に様子を聞いたり、県庁ホームページから見ることが出来る防災わかやまの県内河川/雨量防災情報や土砂災害警戒情報をずっと見ていました。和歌山県のこの関係の「見える化」装備は、大いに進んでいて、今河川の水位がどこまで来ているか、ダムの水位はどうなっているか、流入量、放水量はどうかなどが一目で分かります。
さらに和歌山県は紀の川、熊野川という奈良県、三重県をもまたぐ大河川がありまして、そこには、国交省やJパワーが管理する巨大なダムがいくつもあります。紀の川、熊野川が氾濫するかどうかは、奈良県でどのくらい雨が降って、ダムがどのくらい洪水調整をしてくれるかにかかっているのですが、和歌山県のホームページの県内河川/雨量防災情報では、奈良県にあるダムが今どうなっているか、三重県や奈良県の各地に雨がどのくらい降っているかが、これも合わせて一目で見えるようになっています。
私は、15日から16日にかけて、この情報を見ながら台風の動向をはらはらしながら見守っていたのですが、時間の経過とともに恐怖が募りました。
新宮市熊野川町日足の水位がどんどん上がり、昨年の台風で酷い目にあった田辺市本宮町川湯温泉前の川の水位もどんどん上がり、真夜中になってからは古座川町松根や平井で猛烈な雨が降ったので、七川ダムがひょっとするといっぱいになってしまって大変な事になるかもしれないなどという情報が入ってきました。
昨年の台風20号や、さらには8年前の台風12号の記憶がよぎってきて、大変心配をしました。
結論を言うと、一部に損害は出たがいずれも惨事にならず、ほっと一息ということでしたが、農林水産物も含め損害を受けられた方々や、現場にいて私よりももっと切実な心配をされ、恐怖と戦われた大変多くの方々に心からお見舞申し上げます。
今回は、大惨事にはならなかったのですが、私の印象ではあと10㎝という所で踏み止まったという感じでした。その間災害を食い止めるために頑張ってくれた、すべての関係者に感謝したいと思います。防災、県土整備など県庁の関係職員や市町村の職員、水防団、消防団の方々など、恐怖と戦いながら、よく和歌山を守ってくれたと思います。また、関西電力やJパワーの関係部局の方々にも本当によくやってくれたと心からお礼を申し上げます。
あと10㎝の綱渡りでしたので、「ればたら」を言えば、もし、関西電力の御厚意で県内ダムの水位を極限まで下げてくれていなかったら、多分ダムがいっぱいになって、放水量を増やさざるを得なくなって大惨事が起きていたことでしょう。ダム管理事務所の職員も考えられる最高の手腕を見せてくれたと私は思います。また、奈良県、三重県に大雨が降り続いている中、本来は治水ダムではないJパワーの奈良県のダムが、これまた考えられる最高の手腕で新宮市の被害を最小限にくい止めてくれたと思います。このままでは風屋ダムが満杯になってしまうという状況で、風屋ダムから熊野川への放水をそんなに絞らず、北山川にある池原ダムからの放水をぐっと絞って、日足の人家への被害をすんでの所でくい止めてくれました。ようやく雨と水勢が峠を越したかなと思った時の両ダムの水位はもう少しで満杯という所でしたが、その状態でうまくコントロールしてくれたのです。
和歌山県ホームページを見ていると、こういうことがよく分かります。しかし、見ていると心配でハラハラよけい恐怖にさいなまれました。
被害を受けたところは早速対応をし、道路を復旧し、農林水産物被害に対する手を打っていかなければなりません。まだまだ県庁の仕事は続きます。しかし、我々は、今回の対応も含めていつも反省をし、また新たな改善点を見つけて実行しなければなりません。それに早速着手します。
まだまだ、災害の季節は続きます。