残念ながら、和歌山県で新型コロナ風邪の発症事例が出まして、目下県庁をあげて対応をしています。
中国や日本の他地域の様子を見て和歌山でもいずれ発症者が出るなと予測をしていたし、また中国の団体客中止命令とか、その他様々な旅行自粛、さらには、経済の混乱に伴う、観光業界をはじめ各産業での業績不振を見込んで、防疫と産業界対策の二重の臨戦態勢を発表していまして、そのうち後者については、2月1日から国や他県のどこよりも早く業績急落に伴う繋ぎ資金融資制度を実施していました。
しかし、とうとう2月13日、恐れていた最初の患者が出ました。しかも、病院の医師の方なので、院内感染が疑われる事態となりました。そこで、さっそく、この病院(済生会有田病院)の新規患者受診をストップし、この病院にかかっていて再診を要したり感染を疑う人は、病院に接触者外来を設けて対応してもらい、他に心配の人も一気に増えることを見越して各保健所、本庁の電話相談回線を増やし24時間対応をして、そうしながらとにかく発熱肺炎など発症の疑いのある人を病院の内外を問わず調べることにしました。さらにこの病院には既入院患者もおられるわけで、病気の人を移動してもらうわけにもいきませんので、これ以上院内感染を拡大しないようにしないといけません。そこで、院内で働く医師、次に既感染者に接触した可能性のある看護師、コメディカルの方、次にその他の看護師、さらに他の病院関係者と入院患者さん全員を検査することにしました。残念ながら陽性が数人出て、その人は隔離が強力な別の病院に入院してもらったうえ、その方と濃厚接触をした人を検査したり、経過観察しています。
今のところこの病院の関係者と、地域的に限定的な2、3の発症者といったようにその周辺の方に問題が集中していますので、第一に一刻も早くこの病院内で検査を完了して、全員陰性の状態に持っていきたいと考えています。その上で第2に万一どこかで発症の疑いがある人がいたら、さっそく調べて陽性だったら、入院してもらったうえ、濃厚接触者を徹底的に検査して陽性の人は入院してもらって陰性の人だけにするということを目標にオペレーションを県庁をあげて行っています。
ただ、その中で、陽性の人もまだ見つかりますし、病院の関係者は患者さんを入れて全部で450人くらいいるものですから、検査がすぐ終了しないことに大変心配しています。
まだ陰性が確認されておらず陽性だった人が、仮に別の人に感染すと、クルーズ船のように、いつまでも院内感染が続くということになってしまうからです。この病院とは関係なく、各病院で肺炎で少し原因が疑わしいという方については申し出てください、すぐ検査しますと病院に通知を出したところ、現在、比較的近くに住んでいるが病院と関係のない人が1人発見されただけで、20例くらいすべて陰性が確認されていますので、和歌山中に、もっと言うとこの病院の所在する町においても感染者がたくさんいるという状態にはないと考えています。
従って、当分は上記のオペレーションを一生懸命続けます。
もう一つ残念なことは、どうしてウィルスが済生会有田病院に入ったかということが分からないことです。中国人の受診歴はないようなのです。ただ、付近は有名な観光地だし、近くに中国人の団体客がよく来ていたホテルがある(1月末からは営業休止)ので、これらの人が立ち寄ったと思われる店などをしらみつぶしに調べて、体調が悪い人が居ないかどうかをその店などの関係者で確認に多くの県職員を動員しています。
今のところ、発熱等の訴えをしている人はいないので、これも一安心ということです。新型コロナ風邪予防部隊は本当に手一杯なので、それ以外の人が走り回ってくれているわけです。
仮に、テレビなどで専門家が言っておられるように、我々の封じ込めがうまくいかなかったり、今我々が封じ込めようとしている所以外の所から、別途感染が侵入してきて、DMATの人の感染がその例ですが、感染がもっと一般的になった時は、専門家の方々が言っておられるように、次は、感染は所与として、重症者を防ぎ、守るという事を目的としたオペレーションに切り替えなければならず、その時は発熱外来と発熱病床を各病院に区分して作ってもらわなければならないようになると思いますが、従前から、その点の検討はしているものの、現状は、まだその必要はないレベルだと思います。
以上のことはあらかじめ記者会見で、毎日のように県民の方にお伝えしているつもりです。陽性が分かった方も既に重症になってから感染が発見された1人を除いては症状も安定していて(全く無症状の人もいます。)既に最初陽性が判明した医師の方は全快して陰性となっており、退院をして1週間の経過観察のための自宅待機となっています。上記のオペレーションが奏効して早期に発見して手厚い手当を受けているからかなと思っています。このようなことから、この病気は専門家がよく仰るように、放っとくと肺炎になりやすい風邪の一種と考えて良いのかもしれません。
以上のようなことも記者会見で申し上げたし、これからも申し上げて、県民の方々に冷静に対応して欲しいと考えています。
以上が現在までの経過、並びに今後の方針ですが、特に病院を通じて他の地域よりも感染者が多く出てしまったことは事実で、こういう好ましくない時はトップがちゃんと表に出て、県民ないしは世間に向き合わないといけないと思っていましたので、会見は原則毎日自分でやっています。(紀伊半島大水害の時もそうでした。)
嫌なことが起こって、よく後を引くケースは、トップが出て来ず、広報担当者が出てきて官僚的発現をするものの、中々勇気を持って、事実や今後の方針を言えなくて、人々の不安感や反感を高めてしまうということが多く観察されたからであります。
その中で、人心が不安にならぬように、かつ感染を可能な限り避けるという観点から、出来るだけ情報は開示しているのですが、その意味で必要とは思えない情報でプライバシーに関わることは言えませんので、理由とともにそうはっきり言うことにしています。例えば既に入院していて、家族など濃厚接触者の陰性も確認されている人がどこに住んでいたかとか、あれは何という人だとかの詮索が横行していることや、病院で、一抹の不安を持ちつつ頑張ってくれている関係者の家族を差別したりという例が散見され、とてもいけないことだと思います。そういったこともあり、感染対策という大事な点で不必要な個人又は企業、地域などの情報は、もちろん理由付きで申し上げないことにしています。
ということで毎日出ておりますと、色々な方から励ましをいただきますし、ネットや県への投書等で県内はもちろん、見も知らぬ他県の方も評価をしていただくことが多い(又は多いそうな)のですが、反対もあって、へこむこともあります。いくつか紹介いたしますと、私はちょうど13日にひどい風邪を引いていまして、マスクをしていましたが、案件が案件なので、和歌山県の印象が悪くなるといけないとマスクを外していましたら、咳の発作が起こりました。そうしたら、咳をするような時はマスクをするという良識も無いのかとか言われ、またある時は、あんまり深刻になると和歌山について悪印象を与えると思って、敢えていつも通り平静にしゃべっていたら(若干にこやか)、大変な時に、ニヤニヤしゃべって、けしからん、そんなにテレビに出たいのかとか、罵られたりしてがっくりしました。また、ある感染者の発症がその時点ではこの病院に入院する前だったので、この人については院内感染とは考えられないと言ったことと、次の日に同じ病院の同僚医師の感染が確認されたことなどから院内感染と考えられると言ったことを、某新聞に『知事一転院内感染を認める』と見出しを打たれたことからでしょうか、「前日に違うと言い、次の日にそうだと言うようないい加減なことを言うために出てくるな、ひっこんどれ。」という投書が全国から(少しですが)来たりしてまたまたへこみました。また言葉遣いが悪い、乱暴だなどという投書もあります。(確かに言葉遣いはやや乱暴か?)
まあ、それでも現にそこに危機があるわけですからへこんでなどおれません。県庁の多くの職員や済生会有田病院の関係者、それに全県の医療関係者は本当に献身的に頑張ってくれていますし、市町村の関係職員も一生懸命、厚労省にも国会議員の方々にも大変お世話になっています。本当に感謝します。
ただこのオペレーションとは別に、市中からマスクや消毒液などが売り切れで消えてから余りにも時間が経っていることに少々驚きを禁じ得ません。私が経産省に入省した昭和49年の前の年、石油ショックが日本を襲い、トイレットペーパーと洗剤がマーケットから消えました。その時、メーカーに増産をし、そのアレンジをし、在庫をありったけ市中に出して人々に見せて、人心の安心を買ったあの行政が何故、私の古巣にないのかなあと、ちょっと寂しくなりました。済生会有田病院のある町は予防のためマスク着用を町内放送で呼びかけたところ、どこにマスクがあるのだと町に怒鳴り込まれたそうです。きっとメーカーには在庫があるはずだ、流通にもあるはずだと、県内にほんのちょっとマスクを生産しているメーカーがありましたので、早速訳を話して、協力をお願いしたところ、全部すぐ回してあげるというご厚意をいただき、早速困っている地元の町当局に、18日から19日にかけ届け、町民で困っている人に回してもらいました。
全国的にも、政府が動いたら、あっという間に商品が行き届くと思いますし、そうすると人々の不安も沈静化し、正常化されると思います。