新政策で大事にしていること

 2021年度新政策予算は県当局原案が出来上がりまして、2月県議会に提出するまでになっています。

 これから議会審議が始まりますし、議会を通していただいたら、県民の皆さんにもどんどん広報をしていこうと考えています。その中では、最近はコロナで、ずっとやっていた各地域での行政報告会がやりにくいので、テレビ和歌山の広報番組「きのくに21」の枠を使って県民の皆さんにご説明をしようと考えています。もっともまだ議会を通っていませんので、中味は追ってということにしますが、新政策・予算の編成においてずっと心がけてきたことをいくつか申し上げます。

その1 装備には前向き
  和歌山県は新政策に関わらず、コロナ対策でも病院へのPCR検査装置の配備とかには特に熱心に取り組んできました。さらに、  この流れに沿って、PCR検査をする能力が不足している施設にも簡易型の遺伝子検査装置や抗原検査機器を配備しようとしています。何でもそうですが、装備が貧弱なのに、「働け、働け」では、頑張ってくれている人がまいってしまいます。かつても自由に使えるお金を国がくれた時、工業技術センターの機器を一挙に更新して、最新機器をそろえましたが、これなども同じ考え方です。
  また、警察本部の機器・システムの投資も積極的です。警察官が悪と戦ってくれているわけですが、その時、最新の装備を駆使して最大限の力を発揮してくれるようにしておくのが私の役目だと思っています。予算をケチって貧弱な装備しか使えないで、精神力で頑張れというのは限界があるし、好ましいことではないと思うのであります。

その2 自分達でやろう
  私は県庁の職員は優秀だし、士気も高いと思っています。でもどうも自信がないところがあって、そういう時は外部の権威に頼りがちになります。
  その時、高名なコンサルタント会社やPR会社などに外部委託を出すことが少なくありません。○×計画とか△△ビジョンというのが県のような組織にはいっぱいありますが、それは県庁が中心になって県内の実態をよくつかみ県民の生の声を集約して、作り上げるから価値があるものですから、コンサルタント会社に丸投げでは、その会社がいかに高名な会社でも意味はありません。それに、私は昔からそういうコンサルタント会社が、担当の人が代わっても、同じようなレベルのアウトプットを効率よく提供するためにどんなことをしているか、結構知っている者です。大きな会社は、全国の自治体等から同じような依頼を受けますから、過去の業績をきちんとデータに残していて、多くの場合、要素毎にモジュール化していて、新たに発注された案件にふさわしいものを組み合わせれば、格好良いアウトプットが出来るというものが多いわけです。地域開発計画などでは、中身も似ていれば、概念図に出てくる空を飛んでいる飛行機のイラストまで一緒というのもあります。もちろんこういう会社の方々は優秀ですが、丸投げでよろしくというのはいけません。和歌山県のことは、和歌山県の職員や県民が一番悩んで考えて、努力して、自分たちのものとしていい計画やビジョンを作っていかなければなりません。
  このような考え方に沿って作ったものに、『和歌山県レッドデータブック2012年改訂版』があります。私がまだ知事になって間もない頃、新政策の議論の際、これを作りたいという担当課からの提案に対して、県庁の職員が中心になって、民間の各分野の専門家を糾合して作るのならOK。調査会社に丸投げなら却下ということにしたのです。私はよくこのようなものを見ていますが、調査会社の職業的調査員が好んで取り上げる人気の生物というのがあって、そういうのは、絶滅とはほど遠いほどたくさんいても、絶滅のおそれがあると大騒ぎをし、人気のない(おそらく調査員が知らない)生物については、絶滅のおそれがある場合でも等閑視するという例をいっぱい知っていたからです。でもおかげで和歌山県のレッドデータブックはほとんど調査会社が作った他のものと比べると、県内の英知を結集した良い物が出来ました。
  このように、コンサルタント会社に丸投げをするのはダメという方針で、新政策、予算に臨んでいます。従って、ここ14年来の和歌山県の様々な計画やビジョンは、それ以前のものとは、少なくとも作成過程は異質です。おそらく内容も違った雰囲気のものとなっているでしょう。

その3 影響力を考えよう
  県の政策は県民すべてのものですから、県民の皆さんをより幸せにするものでないといけません。もちろん政策の中味により、すべての県民に等しく影響を与えるものである必要はありませんが、少なくともその政策に関係のある分野においては、関係する多くの人達に認知してもらって、良かったら役立ててもらおうというものでなければなりません。
  従って、ちゃんと多くの人に影響力を持つ政策かどうかは熱心に議論しています。例えば、予算も限られている中で、どうしても補助制度を作りたいと思っても、それをもらえる人がほんの少しで、一方その制度で影響を及ぼしたいという人がたくさんというものであったら、些か値打ちがありません。多くの人に分かってもらおうと思っている新しい考えや制度を説明するシンポジウムなどを開こうとした時、出席者は30人ですというのでは、値打ちがありません。県庁の熱心な職員はどうしてもあることを実現したい、予算を取りたいと思うことが多くありますが、全体のお金がないのなら予算は少しでも良いからとにかくやりたいという場合、誰のためにそれをやろうとしているかを冷静に考えると、ひょっとすると自分の満足のためにやっているのではないかというケースもあるかもしれません。多くの県民をより幸せにするためではなくて、自分が格好いい政策を打ち立てたという存在証明のために仕事をしているのではないかと思われる人を私は冗談で「究極の利己主義者」と呼んでいます。すなわち本物の利己主義者は自らの利得や栄達のために謀を逞しくしますが、「究極の利己主義者」は、善意の塊で、よかれと思って仕事をする立派な人なのですが、仕事の目的が多くの県民をより幸せにするにはどうしたらよいかということより、自らの善意をどう具現化したら良いかを考える人なわけです。
  県庁の仕事の目的は、対象である多くの県民の幸せですから、より多くの人に影響力を与えるにはどうしたらよいかも考えないといけません。同じ予算額でも、例えばセミナーをやる時、オンラインで同時発信をするとか、出席者に今度はその組織の人達にセミナーの内容を伝えてもらうとか、影響力を大きくする方法はいくらでもあります。やりようによっては影響力をうんと大きくすることが出来る場合もありますので、県では皆でいつもそれを追求しています。