和歌山IRについて

1.和歌山の長期衰退傾向を食い止めるための、起死回生の手段と考えて、ずっと取り組んできたIRは、和歌山県段階の最終の局面である県議会に付議されました。
 IR整備法によると、IRを作るためには、県が事業者と「区域整備計画」を作成し、国(国土交通省=観光庁)の認定を受ける必要があり、またそのうちのカジノについてはカジノ管理委員会の免許を受けなければなりません。しかし、その前に立地市の同意(和歌山の場合は市議会に付議)、公安委員会の同意と県議会の議決が必要ということになっています。
 その県議会にかけられたのです。

 県議会冒頭の一般質問において私は次のように答えました。万感の思いを込めたつもりです。

 『IRには、経済波及効果や雇用創出効果、財政の改善などといった大きなメリットがあり、また、新型コロナウイルス感染症収束後の県経済のエンジンになると考えまして、ギャンブル依存症等の社会的リスクを徹底的に排除する措置を講じつつ、その誘致に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
 もちろん、地方都市である和歌山県が、世界中のIR事業者をより取り見取りで選べるはずがございません。また、ここがもっとあった方が良い、ここが不十分だと言ってもすべてがかなえられるわけでもありません。要は、応じてくれた事業者に対して、足下を見られることなく、どこまで国の審査に耐えうるところまでもっていけるかという点から、最善の努力をしてきたつもりでございます。
 こうして、ここまで努力してまいったのも、和歌山の衰退傾向に歯止めをかけたいという思いからであるということはご理解いただいているものと考えます。
 当初、新型コロナウイルス感染症などの影響により、取り組みを予定していた各県も続々と脱落する中で、和歌山IRへ投資する企業が来てくれないのではないか、また、脱落してしまうのではないかと心配していたが、クレアベストが熱心に応じてくれ、結果として、議案としてお示しをした区域整備計画にまで行き着いたということでございます。
 すなわち、今に至るまでは、議員ご発言のとおり、これまで計4回に渡り開催されたIR対策特別委員会において、事業計画を実現するうえで核となる資金計画の内容が不透明である、とのご指摘を頂き、私自身もそのご指摘は尤もであると考えまして、事業者に対し直接対話をし、県議会のご指摘などを説き、より確実性の高い資金計画を示すよう強く求めてきました。その結果、以下に述べますように資金計画も充実し、十分国の審査に耐えられるようになっていると私は思います。
 すなわち、事業者が大いに努力した結果、シーザーズを含めた中核株主が決まり、少数株主も続々と集まってきております。また、融資に関しては、世界に名だたるクレディ・スイスが、ハイリーコンフィデントレターを通して、このプロジェクトに関して融資を取りまとめる自信を示すということに至っております。また、クレディ・スイスの努力により、現在でもすでに金額を記載した企業だけで、所要の資金額を超えていると聞いております。こうして、時間的な制約があったなかで、IRのプロジェクトを実行できる体制は整ったと思います。資金計画の中でも、特に懸念のあった融資は、自らが融資をすると示す銀行がコミットメントレターを出すという日本的な形でなく、クレディ・スイスが融資企業をアレンジする形で、ハイリーコンフィデントレターを出すという形になっておりますが、その双方の形式が、いずれかが法律上許されないわけではございません。コミットメントレター形式でも出せばよいというものではなくて、両形式とも大事なことは、信頼できる機関かどうか、本気かどうかが審査されると考えます。我方の場合は、要は、クレディ・スイスの信用力とクレディ・スイスがアレンジすると言っている融資機関の財力と本気度を証明すれば国の審査で合格できるのではないかと思います。事業者と協力し、また、指導していくつもりであります。さらにまた、十分それはできるのではないかと思っております。さらに、少数株主についても、特に日本企業、和歌山企業の参加招致をさらに積極化していくつもりであります。
 ここまで育ててきたプロジェクトを県レベルでやめてしまうということになりますと、その後の様々な投資誘致の際に障害が生じることを私は恐れます。供託金も取れません。どうかご賛同してくださいますようにお願い申し上げます。
 とは言え、IRに熱心に取り組む方に、この区域整備計画は不合格になるという予測から、別のシナリオを持っていらっしゃる方もいるということを、最近ある有力な方から直接お聞きして知りました。そのシナリオによれば、クレアベスト案は不合格になるばかりか、これを申請すると3年くらい認定の可否が出ず店ざらしに遭い、その間に2次募集があった時に、和歌山がこれに再チャレンジする機会を失うので、今回は申請しない方が良いという意見でありまして、なるほどそういうシナリオもあるのかと正直に思いました。しかし、そもそも国が3年もの間認定の可否を出さないということは一般的には考えられませんし、また、今、申請者が少ない中ですぐに2次募集があるとは考えられないので、仮に万一不合格になっても、和歌山が再チャレンジのチャンスを逃すことにはならないと思いますし、そのシナリオにのっとって、国に申請しなかったら、そのシナリオの正しさを証明できなくなってしまい、IRの実現を望む県民に説明ができなくなるのではないかと思います。
 前述のとおり、現在の区域整備計画は国の審査に耐えうると考えておりまして、それに申請しても和歌山の名折れというレベルではございません。したがって、議員諸氏におかれては、どうか議案にはご賛同いただき、一刻も早くIRを実現すべく国にチャレンジさせていただきたい。それでも万一不合格ということになっても、和歌山県は事業者のためによく戦ってくれたという世評が残り、県としてまた再チャレンジができると私は思います。平にご賛成をお願い申し上げたいと思います。
 ただし、重ねて申し上げますけれども、この段階にまで到ることが出来たのは、これまで折々の議会において、「IR誘致を成功させたい、将来の和歌山の発展の要素として何としても必要であり失敗はできない」との思いを持つ多くの議員のご指摘のおかげと思っているし、その方法、シナリオに様々なものがあっても全てリスペクトの気持ちは失わない所存でございます。ご賛同方、どうぞよろしくお願い申し上げます。』

2.しかし、県議会の結論はNOでした。法の定めるところによって、今回のIR区域の公募において和歌山はIRの実現をかなえられません。
 IRによって、当面経済、雇用の力もまだまだ十分でなく人口の減少も大きい和歌山を反転攻勢に転ずるエンジンを形成するということができなくなりました。デュープロセスをきちんと守り、業者の言いなりにはならぬようにし、かつ、それでも熱意を示してくれた事業者と相談して何とか国へ申請しても恥ずかしくないようここまで持ってきたのに残念です。依存症等の悪影響が出ないように世界一厳しい国の規制に、さらにもっと厳しい県の規制も上乗せして、この点も自信を持っていたのに残念です。
 しかし、反対された県議の中には、もともとIR賛成の方が多く、この否決されたシナリオとは別のシナリオでIRを実現するという方々もおられるので、和歌山の発展のためには、ぜひこのシナリオでIRを実現してもらいたいと思います。私も県当局も協力は惜しみません。
 ただ一つ、和歌山県にとって大変懸念するのは、ここまで推進してきたIRという投資案件を自ら否定してしまうような和歌山県は投資案件を安心して進められないと思われないかということです。これについては、確かに和歌山IRは県議会の否決で頓挫しましたが、これは数々の事情があるきわめて特別な話であって、和歌山県には他にもたくさんの投資案件があり、これらについては和歌山県側はすべて力を合わせて推進につとめ、支障も出ていないので、どうか今回の事例を見て和歌山の投資環境は良くないと思わないでいただきたいと切に思います。