最近セブン&アイが、かねて買収していた西武そごう百貨店を米ファンドに売却すると言うニュースが流れています。米ファンドも百貨店は存続営業するようですが、池袋の西武旗艦店のかなりの部分が家電量販店になるという話で、さらに労働組合が予想される合理化を懸念してでしょうか、近年にないストライキに訴えたとのことでした。売却したセブン&アイはセブンイレブンのてこ入れに専念するとのことであります。一時は、と言っても経済史的には戦争の前ですが、流通革命の旗手であった百貨店もどんどん縮小の傾向があり、大手同士の合併では到底購えない時代の流れがあるのでしょう。百貨店時代に育ち、案外そのファンである私などはいささか寂しい思いがいたします。
堂々とした少数の大型百貨店に対して、どの街角にもある多数のコンビニエンスストアと言う対比に、私は和歌山県の産品の販売促進のために取り組んで、未完に終っているある政策を思い出しました。それが「孫悟空大作戦」です。おなじみの孫悟空は強敵と出会うと髪の毛を毟ってフウと息を吹きかけますが、あらら不思議、孫悟空が髪の毛の数だけいっぱい出来るのであります。これから取ったネーミングが「孫悟空大作戦」です。
どの県もその産品の売り出しには大変熱心で、そのため、東京などの大都会にアンテナショップという産品販売のための組織を持っています。和歌山県もずっと前から東京の有楽町にある交通会館の地下に「わかやま紀州館」というアンテナショップを持っています。かつては公募でこの名称を求めて、「喜集館」と言う名で運用していました。和歌山の紀州と喜びが集まると言うことをかけて、こういう名前にしたのでしょうが、名付けた人や和歌山県の人はこれが和歌山県のアンテナショップであると分かりますが、肝心の売り込み対象である東京の人などにはそんなことは分かりません。自己満足ではいけないと、和歌山県の産品を売っているところだと誰でも分かるように、名前を変えました。しかし、他県のアンテナショップに比べると和歌山県のそれはスケールの点でいささか見劣りがします。交通会館には他県のアンテナショップも結構集まっていまして、創業時よりは地下鉄の開通などによって人通りが飛躍的に伸びている所ですからそんなにひどい立地ではないのですが、昨今、熱心な他県が新宿や日本橋に大きなアンテナショップを作るようになってきましたので、いささか見劣りがするという次第です。例えば、私と同じ時期に汚職の後の知事として就任した東国原知事が率いる宮崎県は、当時新装なった新宿駅東口に大きなアンテナショップを開き、それが東国原知事のショーマンシップと相まって有名になりました。調べましたら、和歌山県の20倍の経費を使って10倍の売り上げを実現しているとのことでした。お金をかけることが何でもいけないことではありませんから、関係部署にも、もっと目立つところにアンテナショップを移してもいいから、その利害得失を分析せよと言う命を下し、さんざん皆で検討したのですが、進言は今の場所で頑張るべしと言うことでした。その時私が全く新しい発想で提案したのが、孫悟空大作戦なのです。すなわち、同じような店がいっぱい出来る方が1カ所の大型店より和歌山の産品が多くの人の目に触れ、わかやま紀州館の名も、和歌山の知名度も上がるからいいのではないかと言うことです。一つ店を出すのも大変なのに沢山店を出すなんてまるで無理という考えもあるでしょうが、そうとも言えないというのが私の考えでした。というのは店を独立で出そうとすると、商品の品揃えを考え、相手と交渉し、在庫を抱え・・・と言う風に手間もコストも随分かかるのですが、わかやま紀州館のビジネスモデルは、産品を売りたい、出したいというサプライヤーは一定の約束を守って、わかやま紀州館の注文に小ロットでも応じて、すぐに商品を送ってこなければいけないと言う仕組みになっています。それでも、知名度が上がって将来大いに売れるのではという期待で、このモデルにしたがってくれるのです。したがって、誰か流通にノウハウのある企業者が出てきたら、そっくりこの仕組みを提供するから、わかやま紀州館をいくつでもデパートや、量販店や、イベント会場などに展開して、わかやま紀州館の名で事業展開をしてもらえるのではないかと考えたのです。大艦巨砲より、「どこでもいつでも」ユビキタスミニわかやま紀州館というものです。その後、少しでも脈のありそうな企業者に対し、私も県庁の職員もこの構想に乗りませんかという誘いかけをしたのですが、うまくいきそうで最後はこけると言うことばかりで、結局実現していません。これが出来ていれば和歌山県の産品の知名度とマーケットペネトレーションがずっと進んだろうになあと残念です。その意味で、これは未完の孫悟空大作戦であります。
自分が仕上げられなかったのに、こういうのもいささかではありますが、和歌山県新政権もこのような新発想も含めて、類い希なる営業力を発揮して、何とか和歌山の産品を売り出してもらいたいものです。